ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第29章 Perfect Crime
《アッシュside》
「落ち着いたか?」
『……うん』
ユウコの目は、やっぱりまだ不安げに揺れていた。
お前は一体どんな夢を見たんだ、お前をこんなにしたのは一体誰なんだ。
抱いてはいけないはずの嫉妬心に駆られ、それを誤魔化すように咳払いをして髪をかきあげた。
『…アッシュ、早起きだったの?』
「いや、たまたま目が覚めたんだ」
『そっか』
「…よかったよ」
『え?』
「起きといてよかった。そうじゃなきゃお前、部屋戻って1人で泣いてたろ?」
『…そうだったかも、ありがとう』
ユウコはようやく少しはにかむように笑った。
「なあ、エイジが起きる前にお前に話しておきたいことがあるんだけどいい?」
『うん…なに?』
オレはこの後の計画をユウコに話した。するとユウコは一瞬驚いたような顔をして、すぐに頷いた。
早速取り掛かるべく、俺は用意させたノートパソコンを立ち上げる。ユウコは俺の隣に椅子を持ってきて座った。
部屋に俺のキータイプ音が響く。
「………んーん、アッシュ…?」
「…起こしちまったか?」
「あ、いや…」
「寝てろよ、まだ早い」
「あれ…ユウコ?」
『おはよう、エイジ』
「ん…2人で朝早くから何してるの?」
「ドロボウ」
「………?」
ベッドから降りたエイジは俺たちの元へやってきた。そして恐る恐るその口を開く。
「その、アッシュ…これからもああいう無茶をするつもりかい?」
「無茶って?」
「そりゃあ…つまりその、撃ち合ったりとか…」
「ビビってんの?」
「だっ、だれがビビったり…!僕は無茶をするだけが勇気じゃないって言いたかったんだよ!年上の者の忠告はきくもんだぞ!」
「そりゃ失礼しました、“オニイチャン”」
「(なっ、なんなんだよ!その立ち直りの早さはっ!ゆうべ泣きべそかいてたのは誰なんだ!!)」
エイジは何かを恐らく日本語で捲し立てた。
『エイジ、“ナキベソ”ってなに?』
「あ…いや、その…」
「ねぇお願いだよお兄さま、ぼくとっても忙しいんだ。イウォーク語で怒鳴るのやめてくれない?」
「もう!……ふんだ!」
エイジはぷりぷりと怒りながらキッチンへと消えていった。
『昨日の夜なにかあったの?』
「…いやべつに?」