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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第29章 Perfect Crime



空を飛ぶ夢を見た。
背中の大きな翼を広げ、遠く飛んでゆく夢を。

どこまでも続く空は自由そのもので、好きな所へ好きなように飛ぶことが出来た。ふと、少し先の時計台へ目をやるとそこにいたのはアッシュだった。私は嬉しくなって、大きく翼を羽ばたいた。

その時、

足に紐のようなものが引っ掛けられて、勢いよく引かれる。下を見ると下品に笑った男たちがその紐の先を掴んでいた。アッシュ…!そう叫びながら彼の方を見ると、既に私よりも大きな翼をはためかせて遠く飛び去ってしまった。

地面に降ろされた私を男たちは取り囲んで、纏っていた白い服を剥ぎ取った。いやだ!やめて、何度口にしてもそれは彼らの耳には届かない。押さえつけながら身体のあちこちをまさぐられ、私はどんどん穢されていった。

そして、

大きなハサミのようなもので、私の羽の1部分を切り落とした。
足から紐を外されると、代わりに重い鎖を嵌められた。
どんなに羽ばたいても切られた羽の隙間から風が逃げて、飛び上がることが出来ない。私は絶望して穢れた身体を抱きしめながら1人で泣いた。

もう二度と空へは戻れない。
…もう二度と愛しい人には会えない。

それでもあの人が恋しくて、面影を辿るように空を見上げる。

空は相も変わらず広いのに、何故か今はその自由だった空に閉じ込められているような気分になった。


戻りたい、また思いのままに飛びたい。
でもそれは叶わない。


アッシュ…、





『さよう、なら』



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