ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第28章 殺人鬼の涙
《英二side》
「アッシュ…」
「ぅ…っく、…ッユウコを、守ってやりたいのに…あいつはいつも傷ついてばかりで…っ俺なんかの、傍にいるから…」
肩から伝わる悲痛な思いが、僕の心の奥底まで流れ込んでくるようだった。
「アッシュ落ち着いて…!何も感じていないことはない。キミはとても傷ついてる、とても…僕にはわかってるよ。それにユウコは、自ら望んでキミの隣にいる。アッシュに守られ、時にはアッシュを守り…ユウコにとってもアッシュはとても大きな存在のはずだ…キミにとってのユウコと同じように」
「……っ…、」
「キミは、キミたちは僕を助けてくれた…キミがあのことで責めを追うなら僕も同じだ」
体を少し離して、僕はアッシュの顔を覗き込む。
「いいかい?今は何を言っても慰めにはならないのかもしれない…でもこれだけは忘れないでくれ。ーー世界中がキミの敵にまわっても、僕はキミの味方だってことさ。キミたちの傍にいる、2人がもし、迷惑じゃなければだけどね」
「……じゃ、俺はこれからもあの不味いサンドイッチを食わされるのか?」
「そうさ、よろこべ!“トーフサンドイッチ”は完全食品さ!キミたちの健康は保証、され……っ」
アッシュはゆっくりとなだれ込むように、僕の膝の上に上半身を倒した。
「そばにいてくれ」
ああ、アッシュ…
「ずっとなんて言わない、今だけでいい……」
これまで、どれだけの重いものをその手に抱えてきたんだ…たった1人で、誰にもキミの弱い部分を見せられずに。
膝にアッシュの体温を感じながら、大きくも今は弱々しい背中を撫でた。
「ーーーずっとだ」