ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第28章 殺人鬼の涙
《英二side》
廊下に出て隣のユウコの部屋の前に立つ。
そして、控えめにコンコンコンとノックをした。
応答を待たずにドアを開ける。
ガチャ、
「……アッシュ、そこにいるのかい?」
カーテンが締め切られ、ベッドサイドランプだけが点いた薄暗い部屋。ピントを合わせるように目を細めてよく見ると、アッシュはユウコの手を握りながら優しく髪を撫でていた。
「…アッシュ、あの…」
「起こして悪かったな」
「いや、そんなのはどうだっていいんだよ」
「見たんだろ?俺が魘されてるとこ」
「………」
「もう戻る」
「あ…うん」
ユウコにかかるタオルケットを直し、アッシュは優しい声で「おやすみ」と声をかけた。そして僕を追い越して元いた部屋へと入っていった。