ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第28章 殺人鬼の涙
《アッシュside》
頻繁に気になるワードを検索すると、今日になってようやく記事がネットに上がっていることを確認できた。…よし、計画に狂いはない。ここまでくれば、次の行動に移せる。
「……」
頭の中に計画図を思い浮かべていたその時、
「…ッ、いってェ!!」
「あっと…ごめん、痛かったかい?」
突然腕の傷に激痛が走った。
能天気に痛かったかと聞いてくるエイジは持ってくると言ったコーヒーではなく消毒液を手に俺の腕を掴んでいた。
「“痛かったかい”?お前はどーか知らないが、俺はデリケートなんだ。ぶきっちょに傷をいじられればすっごく痛い!」
「……口にケガすりゃ良かったのに」
「あ?」
「…そりゃーすまなかった!何しろぶきっちょな日本人だもので!あーっと、また手がすべった!!」
「ってててて!!」
「……よし、さあてぶきっちょな日本人は腹が減ったからサンドイッチでも作ろう」
「……」
「ところでデリケートなアメリカ人はぶきっちょな日本人のサンドイッチを食うかい?」
「指が入ってなきゃな」
ひょこっと俺を覗いていたエイジはいたずらっ子のような顔をして中指を立てた。俺も対抗するように中指を立てる。ガキのようなやり取りに思わず笑みが零れる。
キチネットから下手くそな鼻歌が聞こえてきて、視線を動かすとテーブルにコーヒーが置かれていることに気がついた。
「……」
短く息をついて、ベッドにタブレットを放る。
コーヒーの置かれたテーブル前に腰をかけて頬杖をつきながら“ぶきっちょな日本人”を待った。