ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第27章 眠り姫
《英二side》
「サンクス」
「………」
「なんだよ?さっきから俺の顔ばっか見て」
「いや…まつ毛まで金髪なんだなあって思って」
「下もだぜ、見るか?」
「ほんと!?見せて!!」
「………………」
アッシュは壁に背をつけて絶句していた。
「…冗談だってば」
こんなに年相応の子供っぽく可愛らしい表情を見せるのに、キミがますます遠い所へ行ってしまうような気がして…やっぱり不安だ。
しばらくして控えめな足音が聞こえ目を向けると、ユウコが部屋へと入ってきた。
『……』
ユウコは不自然に首元に触れて、隠しているように見えた。
「お、おかえり!コーヒー入れたんだけど飲む?」
『あ、うん…ありがとうエイジ』
ベッドに座りながらタブレットを手にするアッシュを眺めながら、ユウコは椅子に座った。
マグカップをユウコの前に置くと、もう一度お礼を言って口をつけた。首から手を退けた彼女を見て言葉を失う。
「………」
首だけでも、相当な数の痣がついていた。
フライはこれを見てあんなことを言ったのか…。
こういうの、高校の時同級生の進んでるカップルが見せびらかすようによくつけてたけど、これはそんなくだらないものじゃない。これはただユウコを苦しめる呪いのようなものだ。
『……エイジ?』
「あっ…ごめん」
何がごめんなんだ…気づいてないふりをしようってアッシュに言われたのに。
『コーヒー美味しい』
「それは、良かった」
『私もお腹すいたなあ…食べてもいい?』
「もちろんだよ!」
『ねえ、エイジ』
「なに?」
『やっぱり気になるよね、これ』
「えっ…!?あ、いや、違うよ」
何が違うんだよ。
チラッとアッシュを見ると、目が合った。
『ごめんね、しばらくしたら消えるからさ…、汚いよねこんな見苦しいの』
ユウコは箸を手に取って豆腐を口にした。
「…どうしてキミが謝るの?」
『え?』
「どうして汚いなんて、見苦しいなんて…っ」
『エイジ?』
「そんなことないよ…キミは、」
こんなにも綺麗なのに。
…まずい、涙が出そう。
「ッ…僕、ちょっとトイレ!」
ガタッと席を立って、僕は部屋の外へ走った。