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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第27章 眠り姫


《英二side》

アッシュが部屋へと戻ってきた。


「アッシュ、ユウコどうかしたの?」

「…なあエイジ」

「うん?」

「ユウコの体に何かを見つけても、気付かないふりをしてくれるか」

「…え?何かって何?」

「……」

「アッシュ?」


「あいつは、昨日オーサーに暴行された」

「暴行?……それって、まさか」

「ああ、今もひとりで泣いてる」

「そ、そんな…」

「さっきフライが言ってたろ、ここ指して」

「うん…でもさっきまでは首に何もなかったのに」

「隠してたのさ、恐らくメイクで」

「……」

「さっきあいつがここに来た時、しきりに首を気にしてた」

「気が付かなかった…」


「…オーサーはあいつに気があるらしい」

「えっ!」

「物理的に自分のモノにするために、卑怯な手を使った」

「まって…それなら早く病院に行かないと…!」

「それは多分心配ない」

「ど、どうして?」

「いたろ?あの場にひとり、やけに毒や薬に詳しいヤツが」

「誰?」

「…まあそういうことだから、頼んだぜ」


アッシュは一瞬眉間にシワを寄せてそう言った。

そんな、まさか…ユウコがそんな酷い目に遭ってただなんて。オーサーのヤツ許せない、あいつは僕の大切な友達をどれだけ傷つければ気が済むんだ。


「もう、食わないのか?」

「ああ…ここ、キチネットがついてるんだね。ちょっとコーヒーを入れてくるよ、キミも飲むだろ?」

「あ、ああ」

「ユウコも飲むかな」


僕は色々な感情が溢れてその場から逃げるように簡易キッチンへやってきた。火をつけて、ため息をつく。


改めて自分の日常を思い返してみると、どうしてもここと同じ時が流れているとは思えなかった。

アッシュ、ユウコ…。

神様は何故そこまでの試練をキミたちに課すのだろう。2人は別に多くを望んでいるわけじゃない。きっと幼い頃から、ただなんてことのない日常を普通に過ごしたいだけだったはずなのに。

そしてアッシュ、僕はとても戸惑っているよ。血と硝煙の匂いにまみれ容赦なく敵を殺すキミと、カボチャ嫌いをからかわれて本気で拗ねているキミと…一体どっちが本当のキミなのだろう?

それともそれらは矛盾することなく、同時に君の中に存在するのか…。


僕は時々、とても不安になる。

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