ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第27章 眠り姫
《英二side》
「見ろよ、日本の“スシ”と“トーフ”だぜ。あいつら気を利かしたつもりなんだ」
「ひゃー!ほんっとに日本の豆腐だ!」
「日本食はヤッピーの連中に人気があるのさ、ダイエットフードだからな」
アッシュはひょいと箸でつまんで豆腐を器用に食べた。
「箸の使い方がうまいね、日本で暮らせるよ」
「昔あいつに教わったんだ。木の枝で練習してたら親父が買ってくれて」
「へえ〜!」
「…日本か、そう言えばお前家族は?」
「両親と妹がひとり」
「妹がいるのか?…きっと可愛い子なんだろうな」
「ブスだよ」
「…っふ、こんなことを話すのは初めてだな。もう随分長く一緒にいるのに」
「そうだね…」
「俺はお前のことをほんとに何も知らないんだな…俺ばかりが自分のことを話してきたから」
「僕が聞きたかったんだよ」
僕がそう言うと、アッシュは僕を見つめてこう言った。