ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第27章 眠り姫
《英二side》
「アレックス」
「ああ」
「オーサーに吸収されたグループの数は?」
「ほとんどだぜ。抵抗したグループは袋叩きにされてボスは殺された。仕切ってるのはオーサーの仲間たちだ。なんとか中立を保ってるのはここらじゃチャイニーズを覗いてブラック・サバスとダフィ・ホースだけだ。みんな仕返しが怖くて何もできねえのさ」
「…ふん、恐怖政治か。ヤツのやりそうなことだ。オーサーは俺とユウコが逃げたことを知ってる。今頃血眼になって俺たちを探してるだろう。ヤツの後ろにはコルシカ・マフィアがついている…だが、その動きは俺が封じる」
「「「………」」」
「心配するな、俺に考えがある。お前たちは地下へ潜りできる限り情報を集めろ。グループの人数、人種構成、ボスは誰か、ヤサはどこか、縄張りからたまり場、グループ間の力関係…ただし十分に用心することだ。お前たちも危険であることに変わりはない。今は中立の立場をとっている連中も息を潜めてことの成り行きを見ているに違いない。少しでも弱みを見せれば一気に潰しにかかってくるぞ、油断するな!」
「「「「「おう!!!」」」」」
「………行け!」
その声を合図に全員が一気にこの部屋を駆け出ていった。僕はその様子をぼうっと見ていた。
「…どうした?ぼやっとして」
「すごいリーダーシップだと思って」
「所詮サル山のボスさ、それよりメシ食おうぜ腹が減った」
「ユウコは起こさなくていいの?」
「…なんだよその顔」
「いや、別に?」
一緒に寝てるところを僕に見られたのが余程気まずかったのか、頬を赤くし唇をツンと尖らせてアッシュは腕を組んだ。
「それにしてもあの格好で寝てるとさ…本物のお姫様みたいだね」
「お前は本物のお姫様ってヤツを見たことあんのかよ」
「ないけど!…きっとこんなだよ」
「ピンポイントに手元の銃を狙ったり、自分を刺して傷作るお姫様か?」
「そんなお姫様のことを大事そうに抱えて寝てたのはどこの王子様だっけな?」
僕がからかうようにそう言うと、シャワーを浴びてふわっとした髪の毛をかきあげてアッシュはため息をついた。