ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第27章 眠り姫
《英二side》
シャンプーと石鹸を持ってお風呂場にやってくると、アッシュは既にバスタブに浸かっていた。
「……」
あんなことがあった今、どんな顔をしていたらいいのか分からなくて僕はアッシュに背を向けて歩き出す。そんな僕にアッシュは声をかけた。
「…ショーターのこと、聞かないのか?」
「キミが話そうと思ったときでいいよ」
「…あいつが永遠にヤツらの手に渡らないようにしてきた」
それがどういう意味を持つのか、この世界に疎い僕にもなんとなくわかったような気がした。
「……そう、ありがとうアッシュ」
部屋に戻ると、リンクスのみんなは妙な緊張感を放っていた。そんな中でユウコはアッシュのシャツを抱きしめながらまるで呪いを掛けられたお姫様のように眠っていた。
しばらくしてアッシュがタオルでガシガシと頭を拭きながら戻ってくると、更に場の空気がピリッとする。
「……」
流れるようにテーブルからタブレットを取るとソファに腰掛けた。
すごいな。みんなアッシュのひとつひとつの動作を息を詰めて見てる。ボスの判断を、命令を待ってるんだ。彼らにとってボスは絶対なんだ。今までそんなこと考えもしなかった。…でもこの圧倒的な存在感。
ーー彼は“王者”なんだ。
尊敬と畏怖と、
絶対的権力の象徴ーー
…でも、僕の知ってる彼は。