ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第27章 眠り姫
《英二side》
ピピピピ、ピピピピ…
2時間後に起こせとアッシュが言うものだから、僕はアラームをかけていた。眠い目を擦ってアラームを止めると、それを聞いていたはずのアレックスもコングもボーンズも素知らぬ振りをして動こうとはしなかった。
「2時間経ったよ、起こさなくていいの?」
「「「……」」」
気まずそうな顔をした3人は目を合わせてくれない。
「?…一体さっきから何を怖がってるんだよ?何かあるっていうのかい?」
「……ボスは死ぬほど寝起きが悪い」
………はい?
何を言い出すのかと思えば寝起きが悪いって、
「それだけ?」
「“それだけ”って言うけどな!お前は知らねえからそんなことが言えんだよ!」
「アレックス、しぃ〜っ!!」
「…寝起きのアッシュはライオンよりおっかねえんだぜ」
「俺の歯をみろよ、言われた通りしてこのザマだぜぇ?」
冗談ではなく本気で怯えきった3人をみて、僕はふぅとため息をつく。
「ならいいよ、僕が起こすから」
「わっ、」
「ひぃい」
ベッドに向かうと、相変わらず抱き合って眠る2人の姿があった。せっかく幸せそうなところを起こすのは忍びないけど…仕方ない。
「アッシュ、起きて時間だよ」
「…………」
「起きろったら!2時間経ったぜ!」
バシンと叩くと辺りから悲鳴が聞こえた。
するとようやくアッシュに反応が見えた。
モゾモゾと動きながらユウコに埋めていた顔を上げる。
「……みろよあの眉のシワ」
「怒るぞ怒るぞ…おっかねえ〜」
「……………」
「2時間経ったら起こせって言ったろ?」
「…にじかん…」
寝起きで舌っ足らずにそう言うアッシュが可笑しくて笑いながらそうだよと言うと、覚えてねえと髪をクシャッとかきあげて起き上がろうとした、が
『……ん』
ユウコがシャツをキュッと掴んだまま離さなかった。
「……」
アッシュはこうなった経緯を覚えていないのか、困ったような顔をしてシャツを脱いだ。
「…シャワー浴びてくる」
そう言ってよろよろ立ち去る姿をアレックスたちはとても不思議そうな顔をして目で追っていた。
「おい!!セッケンはどうした!シャンプーもねえぞッ!!」
お風呂場から聞こえた怒鳴り声に大慌てしたみんな。
「僕が持っていくよ」