ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第27章 眠り姫
《英二side》
スースーと聞こえる寝息に僕は呆気に取られる。
「…スイッチが切れるみたいに眠っちゃったよ」
「“寝る時”はな」
「?…なんかあるのかい?」
ガバッ
「「「わあぁあああっ!!!」」」
アッシュが起き上がると周りのみんなはソファやテーブルに隠れ始めた。
「2時間だ!2時間経ったら起こせよ」
「イ、イエスボス!!」
その返事を聞くなり再びドサッとベッドへ倒れ込むアッシュ。
周りのみんながそろりとその姿を覗く中、カツンカツンと音を立ててユウコが部屋へと戻ってきた。
「あ、ユウコ………って…あれ、」
ユウコはフラフラとベッドに向かい、アッシュの隣に横たわった。普段からはとても想像できないその光景に、口をパクパクとさせながら周りを見ると彼らは変わった様子もなくそれぞれの準備に取りかかっていた。
「どうした?」
「あ、いや…ちょっと驚いて」
「ん?……ああ、それならもう少ししたらもっと驚くと思うぜ」
「え、もう少ししたらって?」
『っ…んんん、』
すると、突然眠っていたはずのユウコが何かを探すように布団のあちこちに手を這わせた。
「何してるの?」
「まあ見てなって」
「………」
次の瞬間、なんとアッシュはユウコの体をグッと引いて腕の中に閉じ込めるように抱きしめた。
「!?」
「な?驚いたろ?」
ユウコはユウコですっかり安心したようにアッシュのボロボロのシャツを掴んで寝息を立てている。まるで眠る時はいつもそうしてきたかのような自然さ。僕は幻でも見ているかのような気になった。だって信じられないよ、あの2人が抱き合って寝てるなんて…。
「キ、キミたちは、驚かないの?!普段の2人じゃこんなの絶対ありえないのに…!」
「あ〜…うん、まあなァ」
「そりゃ俺たちも見慣れてるってわけじゃないぜ?最初はもちろん驚いたけどさ…限界まで動いてきて倒れるように眠った時だけなんだ、こういうの」
「……」
「無意識の中でだけお互いに素直になれるんだろうさ、きっと」
リンクスのNo.2のアレックスは、よくわかんねえけどなと言って笑った
無意識の中でだけ、なんて。
よく考えたらキミたちらしいかも。
僕も思わず笑みが零れた。