ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第9章 無茶すぎるお願い
面会ホールに入ると面会中の囚人と思われる人達に「女!?」「Hey、カノジョ!」「かわい子ちゃん!」と騒がれる。
この年齢の女が刑務所の面会ホールに入るなんて、本当に絶対にありえないことなんだなと身をもって知る。
ジロジロと視線を感じ、途中声を掛けられながらもなんとか4人でテーブルに辿り着くという時、エイジが突然グッと繋いだままの手を引いた。バランスを崩してエイジの胸の中に飛び込む。
『……ッ!?』
「英ちゃん?!」
そして空いた右手を私の背中に回すと、
「…ユウコ、僕の彼女なんだろ?…気分悪いじゃないか、人の彼女をジロジロと見られて。」
バッと顔を上げると、エイジは真面目な顔をしていた。
“僕の彼女”と初めて言われるそのワードに私は照れて顔を赤くしてしまう。
その様子を見ていた周りの男たちは少しの沈黙の後ヒューヒューと指笛を鳴らし、やるじゃねぇかチャイニーズ!と声をあげた。
その声にハッと我に返ったらしいエイジが、背中に回した手を解くと
「…ジャパニーズだよ」
と小声で言った。