ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第9章 無茶すぎるお願い
刑務所の裏口に着くと、そこにはイベさんとエイジがいた。
「ユウコか!?…あぁ、なんだか久しぶりな気がするよ。」
『イベさん、無事で良かった!』
「…ユウコ」
『エイジ…怪我は大丈夫?…警察を呼んでくれて本当にありがとう…助かった…!』
「…よし、手続きが済んだぞ。そうだユウコ、勢いもあってここに来てもらったが…本来はキミのような女の子がここにくるなんてありえないことなんだ、ましてやキミはリンクスの一員だからね。顔を知ってるやつが見たらすぐに分かるだろう。だからこれを掛けて、そして英二と恋人のフリをしてくれ。キミの正体がバレたらそれこそまずい!」
私はチャーリーからサングラスを受け取り掛ける。
少し大きいので位置が下にズレて目が見える。
「…大きかったな、まあ無いよりは良いだろう。」
「恋人のフリって言われてもなあ…」
エイジがぼやく
『エイジ、私恋人いたことないよ…。エスコートしてくれる?』
「ぼ、僕だって恋人らしいことした恋人なんていないよ!アッシュとは普段どんな風に歩いてるん…あっ」
エイジはアッシュと名前をポロリとこぼして申し訳なさそうに口を覆う。
私は気にしていない素振りをする。
アッシュと2人で歩く時……考えてみたけど至って普通だ。普通に横に並んで歩くだけ。
アッシュともし恋人だったら…私は彼とどう歩きたいのかな。
『わかった…今はエイジと私は恋人、ね。』
エイジの左腕に自分の右腕を絡める。
そして、するりと腕を下に下ろし手のひらをぎゅっと握った。
「!?」
「英ちゃん大丈夫かい?」
「うん、いいじゃないか。日本のカップルに見えるよ。」
『恋人なら恋人繋ぎでしょ?』
顔を赤くしたエイジはチラッと私を見て
「キミって、時折大胆だよね…」
と言った。
私たちはいよいよ、刑務所の中に歩みを進める。