ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第25章 友よ
立ちすくむ私は手を引かれ部屋の外へと出た。途中、動くことのないショーターを何度も振り返った。
数秒後、爆発音が響き渡り部屋の中には炎が上がっていた。
その燃え盛る炎の中心にいる彼を、私たちはただ見つめていた。唯一無二の友人が焼けていくにおいを感じながら、足の震えも忘れてただただ、見つめていた。
1歩踏み出した時、カツンと足に何かが当たる。
『……』
私はそれを拾い上げて胸に抱いた。
「……あんたが、アッシュ・リンクスか…?」
「……」
振り返ると、そこには幼い雰囲気のチャイニーズが立っていた。
「っ!」
男は私の手の中のものを見て目を見開いた。
「…その死体は、まさか…ショーターか?あんたたちが火を?」
何も答えない私たちに苛立ったように男は声を荒らげる。
「答えろアッシュ・リンクス!!これは、あんたがやったことか!?あんたがショーターを殺したのか!?」
「………失せろ、俺は機嫌が悪い」
「…俺はシン・スウ・リン。ショーターが死んだのなら名実ともに俺が新しいボスということになる…あんたが本当にショーターを殺したのなら、あんたを許すわけにはいかない!…“友人を裏切る者には死の償いを”、これはボスとしての俺の最初の仕事というわけだ…勝負だアッシュ!!」
「…聞こえなかったのか、俺は機嫌が悪い…」
「ボス同士の勝負に銃はなしだ。いくらあんたが天才的なスナイパーでもそれがしきたりだ…分かってるんだろうな?」
『…私が相手になろうか』
「ユウコ、やめろ」
「…へえ、あんたがユウコ・リンクスか?ショーターからそこらの普通の女とは違うって聞いてたけど、随分華奢だな。でも俺は女とは勝負しない、“お姫様”は大人しく下がってな」
『……チッ』
私がその男に向かって歩き出すと、それを止めるように腕を引かれる。
「俺とやり合うには10年早い、お前はきっとこいつにも敵わないだろうさ」
「…なんだと?でも、やってみなきゃ…
わからねえよッ!!!」
次の瞬間、男の腕からヒュンと糸だか紐だかが放たれた。