ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第25章 友よ
すると、アッシュの手のひらがそっと私の銃を下ろさせた。
『離し………ッ、』
そして次の瞬間、後頭部をグッと捕まれ私の顔面はアッシュの胸に押し付けられていた。
「…………」
ガガガガガガガガ…
アッシュ越しに振動が身体に響く。
私の涙はシャツに染みていく。
やがてガチンッガチンッと弾丸が切れても、アッシュはなおも引き金を引き続けた。
足元にはカラカラと音を立てて無数の薬莢が転がる。
「…ッう、うう…、ああ…」
崩れ落ちるアッシュと共に膝をついて、抱えられたままの私はギュッとそのシャツを掴んだ。
堪えきれない想いを吐き出すように、私たちは大声を上げて泣き叫んだ。
だだっ広い室内に反響する声は、まるで自分たち以外の誰かが泣いているかのようにも感じられる。やるせない感情はいくら吐き出しても湧き上がってきて、とどまることを知らない。
『ひ…う、ぅ…っ』
バルコニーで私を抱き締めながら「苦しい、助けてくれ」と言ったショーターを思い出す。
『……っ、』
あれは私に対するSOSだった。
それなのに、私は。
…私は、
『…っ、ショーター…ぅっ…ショー…ター…!!!』
いつも私が苦しいとき辛いときには支えてもらったのに。数え切れないほど、たくさんの場面で助けてもらったのに。
…それなのに私は、あの時咄嗟にアッシュとショーターの命を天秤にかけて、彼へと銃口を向けた。
なんてひどいことを…。
自分で自分を許せなくなる。
最低だ、いつだって私は最低だ。
スキップ、グリフ、ショーター…。
弱くて、醜くて、
結局誰のことも救えない自分が大嫌いだ…!
サングラスの奥の優しい瞳を思い浮かべては、言葉にならない嗚咽が漏れる。
すると、
「……俺の、せいだ」
ぽつりと、嗚咽混じりの声でそう聞こえた。
『……っ、』
違う、違うよアッシュ。
『…わた、しだよ!…私が…っ私のせいでショーターは…!』
「………ッ、」
グッと一瞬私を強く引き寄せるとアッシュはゆらりと立ち上がった。歩みを進める先は、ショーター。
「………立て、ユウコ」
アッシュはショーターの胸の銃創を指で撫でた後、腰のベルトから手榴弾を取り出してピンを抜いた。