ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第25章 友よ
中に戻ると、再び緊張感が走る。
足音が聞こえ角を覗くと案の定、残党がいた。
パンッ
ガガガガガガ
私に銃を飛ばされ、何も出来ないところをアッシュが撃つ。
もはや私たちに会話などなかった。ただお互いの考えることが手に取るようにわかって、それぞれの役割を果たすだけ。
ショーターを探して、私たちは心当たりの場所へ急ぐ。
ある部屋の前へたどり着くと、シューッと自動扉が開いた。タイル状の床の上を歩くと、カツンカツンと私のヒールが響く。
「…っ、は…うわっ!」
階段の下へ視線を向けると、そこには先程の処刑室にいたあの男の姿が見えた。動けないのか私たちが近付く間も慌てたように息を荒らげている。
「………」
「たっ、助けてくれ!殺さないでくれーっ!!」
込み上げるような怒りを押し殺しながら私たちは歩みを進める。
「う、う…動けないんだ!髪の長い中国人の女に、は、針みたいなので刺されて…足が動かないんだよ!」
「…中国人の、女?」
それはきっとユーシスさん。
「あ、ああ!若くて、き…綺麗な娘だったけど…!あいつがサンプルを持って逃げたんだ!本当だよ、“バナナフィッシュ”はもうここにはないんだ!」
その時、私の目に信じられない光景が映った。
『……ッあ、』
私の反応を見てアッシュも同じ方向へ目を向けた。
「!!……あ、ああああ…っ」
固く冷たそうなベッドの上に横たわっていたのは、紛れもなく私たちの愛する…かけがけのない友人。
アッシュはガクンと膝から崩れ落ち、頭を抱える。
「なんて、ことを……っ!」
『…ショ……っ』
血塗れのメス、ドリル…。脳が理解を拒むほどの状態に手足が震えて止まらなくなった。
「し、しかたなかったんだ!だってそうだろ?!ゴルツィネの命令には逆らえない!“バナナフィッシュ”は突然変異物質で…だから情報不足なんだよ!だから脳が必要で……!」
アッシュは、バッと男に向き直り涙を流しながら睨みつけた。
「…わあっ!!た、助けてくれ!悪かった!お、お、俺が悪かったよ!グリフィンは…君の兄さんのことはほんっとにすまないと思ってるんだよ!」
グリフ……その名前を呼ぶな。
ふざけるな、ふざけるな…!
許せない、ころす…殺してやる…!!
私は男に銃口を向けた。