ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第25章 友よ
「…お…、…ろ」
『……っん、』
「…ユウコ、起きろ」
バッと目が覚めて、私はアッシュの足にしがみついた。
またオーサーが来たのかもしれない。
私をアッシュから引き剥がそうと強い力で……
「ユウコ」
ハッキリとアッシュの声が聞こえて顔を上げる。
するとそこには傷だらけのアッシュが私を見下ろしていた。
『…ア、シュ』
「平気かよ?」
『オーサーは…?』
「もうここにはいないってさ」
『……』
「なあ…危ないから、少し離れていてくれ」
『っ、え?』
「そんなに不安そうな顔すんなよ…大丈夫だから」
優しい声で言い放ったアッシュ。
私は頷き、ゆっくりと離れて彼を見た。
すると、
ギッ、ギッ…ギリッ
手首の鎖を握り勢いよく地面を蹴ると空中ブランコのように体を揺らすアッシュ。私は何をするつもりなのか分からず、じっとその様子をただただ見ていた。
「……ん」
「…アッ、シュか…?」
鎖の擦れる音に、ロボさんとイベさんが目を覚ました。
「やっと、お目覚めかよ!」
「……なにを、している?」
ぐるりと空中で一回転したアッシュは顔を歪めながら鎖の固定される上の柱へと登った。そして、いつの間に手に入れたのか鍵を使い手枷を外すと再び地面へ飛び降りてきた。
『……アッシュ?』
「ユウコ、立てるか?」
差し出された手を取るとクンッと引かれ、私は立ち上がった。
「…お、おいお前…いつの間に鍵を」
「話はあとだ。鍵を持ってきてやる」
扉に向かうアッシュの後に続いて外に出る。
「!」
そこには見張りと思わしき男たちがみんな倒れていた。
目を見開いて、口から血や泡を吹いて…。
「…チッ、何が“眠らせた”だ。殺したんじゃねえか!」
『え?』
「ユーシスさ…ついさっき俺に鍵を渡して出ていった」
『……』
ユーシスさんが、これを?
なかなか想像のつかない所業に喉がゴクンと上下する。
「あったぞ、アイツらを解いてさっさとここを離れよう」
中に戻り2人の鎖を解くと、私たちは武器庫へ向かった。