ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第25章 友よ
《アッシュside》
「ショーターには…気の毒なことをしたね」
「っ!…お前がそれを言うのか?!二度とあいつの名を口にするんじゃねえ!とっとと失せろ!」
「…キミでも弱音を吐くんだね。キミは自分自身への攻撃には信じられないほど強いのに、愛する者に対する攻撃には本当に弱い人だ…いつかかならずそれがキミの命取りになるよ。それでもキミは、仲間を見捨てることはできないんだろうけど」
「……」
「それより今夜ゴルツィネはオーサーらを連れて外出している。ある計画を見届けるために」
「ある計画、だと?」
「それはそのうちわかるよ、明日の新聞を見ればね…それより、大切なのは警備が手薄になっているということだ。さすがにゴルツィネはキミのことを知り尽くしているね。キミを手に入れてからは警備を倍に増やしアリの入る隙もないほどの厳重さだ。それだけキミを警戒しているということだ。…だが、部下たちはキミを知り尽くしているわけではない」
「…」
「彼らにとってキミはボスを裏切って逃げだした愚かで非力な少年、としか映ってはいまい。お目付け役のいない今、人数は増えても戦力が増大したことにはならないということさ」
饒舌なこいつは一体何を考えているんだ。
「これはキミの手錠の鍵」
そう言って俺のカマーバンドに鍵をねじ込んだ。
「復讐は果たせないけれど、少なくともキミの愛する者は救うことができる…手錠を外してあげられなくてすまないね、もし外したら…キミは今すぐ僕の首をへし折りにかかるだろうからさ」
「…今出来なくても、いずれそうするさ…お前は後悔することになる…俺に情けをかけたことを。俺は必ずお前を殺す」
「それも仕方ないね、そういう巡り合わせなら」
ひらりと長い髪を翻して扉に向かうユーシス。
「幸運を祈るよ、アッシュ。
…今度会う時は、殺される時かな」