ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第25章 友よ
《アッシュside》
「!」
「…こんなにひどいめにあっても、まだ僕を睨みつけるだけの気力が残ってるのかい?まったくキミは賞賛に値するね…それにしてもあのオーサーという男はよっぽどキミにコンプレックスがあるみたいだ」
近付いて俺に触ろうとするこいつに声を上げる。
「さ…さわるな!!」
「ただの傷薬だよ、消炎と化膿どめ」
首に触れる指が俺の傷口に無遠慮に薬を塗り込む。
「見張りは、どうした?」
「睡眠薬でおねんねさ、僕の専門分野だからね。少し眠ってもらったよ」
すると、ふと視線を下げたユーシスにつられて俺も足元を見た。そこには変わらず俺にしがみつくユウコの姿があった。
「ついさっきオーサーが彼女を連れていこうとしていたけれど、彼女はひどく抵抗していたよ…可哀想になるほど」
俺が気を失っている間に来たのか。
「そういえばお前…さっきこいつに何を飲ませた?」
「内緒」
「あァ?」
「…なんてね、気になるなら彼女に聞きなよ」
「……」
「女のユウコがオーサーに身体を好きにされて、どれほど心身ともに傷ついているか…キミならよくわかるでしょう?」
「分かった口利くんじゃねえよ」
「わかるんだよ、僕にだって」
しゃがみ込んだユーシスはユウコの乱れる髪をスッと撫でて目を伏せた。