ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第25章 友よ
「逃げろエイジ!!」
ザシュッ
すんでのところで躱したエイジの腕は、ショーターのナイフによって切れて出血している。
『エイジ……、ショーター!!』
ショーターは、苦しそうに顔を歪めてエイジにジリジリと迫る。
「…ッハハ、いいぞその調子だ」
「オーサー!俺を殺したいんだろ!殺せ!お前の好きにしろ!」
アッシュの手首の鎖が切なく音を響かせる。
「っふ、もちろんそうさせてもらうさ…だが楽しみは後に残しておきたい」
オーサーはそう言いながら私の腕をグッと引いた。
『…っ!』
「…さあ、ユウコ…覚悟は決まったろうな?」
耳元で囁かれて、思わず顔を見上げる。
「言ったよな、この口に無理やりにでも俺の女になりたいと言わせてやるって」
この口、と言いながら私の唇を親指で弄ぶ。
『…ッ』
私が睨みつけると「いい目だなァ」なんて笑われてギュッと目を閉じた。
「ユウコ、お前はあまりに強情だからな…選ばせてやることにしたんだ」
『………?』
「今こいつの目の前で俺の女になると誓えば、アッシュの無事はもちろん…あいつらを止めてやってもいい」
『……えっ、』
「テメェ!!」
「もし誓えないのなら…ほら」
手に握らされたのは、ナイフだった。
「…この手でアッシュを殺せ、さもなくばあのサムライボーイにBANANA FISHを投与してアッシュを殺すように命じてやる」
そんな…
『…………ッ…』
アッシュを殺すことなんて、絶対に出来ない。
エイジにBANANA FISHをなんて想像もしたくない。
私がオーサーのものになると誓えば、全てが解決する…
そう、全てが。
『…ほん、とうに…アッシュも、2人も助かる…?』
「ああ」
「……おい、や…めろユウコ」
『おねがい……』
「…ユウコ、まて」
『っ……わ、たしを…オーサーのものに…』
「…っふはは」
「やめろユウコ!!!!」
『!……っ』
「…お願いだ…それ以上言わないでくれ」
アッシュの目は絶望を色濃く映して、縋るように私を見ていた。「言うな」と何度も繰り返されるその悲痛な声に私はどうしたらいいのかわからなくなる。