ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第25章 友よ
その時
視界の端で、ユラユラと誰かが動くのが見えた。
「『ショーター!』」
現れたショーターは汗だくで、歩くのがやっとというほどにフラついていた。
『ショーター、大丈夫?』
「よかった、無事で」
「すまねえ…」
「気にするな、お前のせいじゃねえよ」
「…そうじゃない」
『ショーター…?』
「俺は…も、う……だめだ」
「?…ど、どうしたんだ…ショーター」
バンッ
奥の扉が開き、そこに姿を現したのはエイジだった。
「エイジ!」
「英ちゃん!英ちゃん無事だったか!?」
「いっ…いててて!暴れるなシュンイチ!」
エイジも無事だったんだ、良かった…!
『エイジ…!』
私が駆け寄ろうとすると、腰に腕が回り阻止される。
『…はなしてよ』
「まあ、見てろ」
「っ…は、あ……うあ…あああ!」
エイジを目にした瞬間、ショーターは後ずさりながら頭を抱えて蹲ってしまった。
『…な、なに…、どうしたの…』
「あた、まが…ぁあ!…うわあああ!」
「ショーター!おい!ショーター!!」
「うあああ……っ、うう」
「まさか……」
アッシュのその言葉に、ピンときてしまった
まさか、ショーター…嘘でしょ
「ーーそう…BANANA FISHだ」
「『!?』」
「アッシュ!お前にいいものを見せてやろう」
そう言って私から離れたオーサーは、エイジに近づきその胸ぐらを掴みあげた。そして、ズルズルと引きずりながらショーターの前に放る。
「おいショーター、こいつを覚えているだろうな?」
「っは…ぅ、あ…!ぁあうっ、来るなァ!!!」
「さあ、思い出したろう?こいつはお前の敵だ」
「…っうぅう」
「こいつを殺せ!!」
するとショーターはわなわなと震え、歯を食いしばりナイフを手にした。
「…よ、よせショーター!正気にもどれ!!」
『ショーター!!』
ショーターのエイジに向ける殺気立った目は本物で、私たちが声をかけてもあの優しかった目には戻らない。
「そらよ、お前も戦うんだ…死にたくなければな」
カシャンと投げられたナイフをエイジは拾わない。
「ショーター…僕だよ、わからないのかい?!」
『!』
ショーターは勢いよくナイフを振りかざした。