ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第25章 友よ
ガチャンッ
突然大きな音が響いて目を向けると、ナイフよりも鋭い目付きをしたオーサーが私を睨みつけていた。
「…随分といい度胸してんじゃねえか、ユウコよォ?」
『………』
「ッハ、この後が楽しみだぜ」
「……そういや、なぜこの場にエイジやショーターがいない?」
「彼らは招待していない、だが安心しなさい。あとで会わせてあげよう」
「…この期に及んで人の心配とはな。自分の立場を考えてみたらどうだ?」
「おまえもな」
「何ィ?」
「喧嘩はやめなさい……ほら、デザートがきたぞ。シャンペンのシャーベット、アッシュとユウコの好物だったろう?」
運ばれてきたものは、これまでに何度も口にしたものだった。初めて食べた時に思わず顔を見合わせたことを今でも覚えている。
「久しぶりに2人が揃ったところを見たが、あの頃とはなにも変わらないものだな。昨日の事のようにあの頃を思い出すよ…本当に不思議な“絆”だ」
ディノの目を見ると、それはアッシュを一直線に射抜いていた。
「私はかつてお前に様々なことを教えた…本を与え、教師をつけ、テーブル・マナーからワインの知識まで…それから言われるままに銃を与え腕を磨かせた」
「……」
「まさかその銃口をむけられることになろうとは…あの頃は夢にも思わなかったよ…お前は私の知る限り、もっとも美しく、もっとも危険な獣だ…アッシュ」
アッシュは口の端を上品に上げて、挑発するように笑みを浮かべた。
「うわあ!」
マシューの大きな声が辺りに響く。
『!?』
振り返ると、ドアの向こうからバタバタと男たちが銃を構えて入ってきて私とアッシュ、イベさんにロボさんはたちまちその男たちに取り囲まれてしまった。
「…さて、茶番はもう終わりだ。
ーーショーの会場へご案内しよう」