ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第24章 あの頃のキミへ
《アッシュside》
ネックレスの金具を挟む指が震えた。
冷静になんてなれるはずがなかった。
7年前の俺は、ずっとこの瞬間を夢見ていた。
だがそれは1年後の11歳のこいつの誕生日に打ち砕かれた。まさに、あそこにでかでかと飾られる趣味の悪い写真を撮ったあの日に。
…俺の手はユウコを苦しめてばかりだった。
チェーンがかかる髪を持ち上げて、そっとおろす。
華奢な肩に手を乗せてあの頃の俺を思う。
お前からのプレゼント、
…ようやく渡せたよ。
『あ、ありが』
ユウコが振り返るよりも先に俺は首にキスをする。
『っ!……アッ…シュ?』
そして耳元に唇を寄せると、こいつの肩がビクッと揺れた。
「ずっとお前にこれを渡したかった」
『え、』
「お前に似合うと思って選んだんだ、あの頃の俺が」
『!…もしかして、昔ヒューゴのところで夜中に働いてたのって…』
「…ああ、これをお前にプレゼントしたかったから」
『そう、だったんだ…これのことだったんだね…』
ユウコは声を震わせて、首元のハートを撫でた。
『…似合ってる?』
「当たり前だろ、俺が選んだんだぜ?」
『ふふっ…ありがとう、大切にするね』
あまりにも嬉しそうに笑うから俺は急に恥ずかしくなった。
「いやそんな、大したもんじゃねえよ…ガキの頃に買ったやつだし」
そう、これはあの頃の俺にとっては高価な物だったが、今考えればたかだか90ドルの安物。そんなに喜んでもらえるような物じゃない。
『…ううん、アッシュが私のために選んでくれたものだもん。ずっとずっと大切にする、私の宝物だよ』
「………」
そんなことを言われて、俺はどうしたらいい。これ以上惚れさせて、お前は俺をどうしたいんだ。
俺がそんなことを思ってるなんて、お前は1ミリたりとも気が付いていないんだろう。
…俺は分かってる、お前のそれはただの優しさなのだと。
でもお前のそんなところも含めて愛しく思ってしまう俺は、つくづくどうしようもない男だと心の中でため息をついた。