ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第24章 あの頃のキミへ
再び席に着いて、私は水を飲んだ。
耳はじんじんしているけど、これはアッシュが開けてくれたものなんだと思うと特別な感じがして嬉しくなる。ちらっと横のアッシュを盗み見ると、左耳の黒がよく似合っていてソワソワしてしまう。
「喜んでもらえたようで何よりだよ。そうだユウコ、お前にはもうひとつプレゼントがあるそうだよ…アッシュからね」
『え?』
「…は?何のことだよ」
アッシュは本当になんのことか分かっていないような雰囲気だった。
「持ってきなさい」
ディノがパンパンと手を叩くと、脇に控えていた男が小さな黒い光沢のある紙袋をアッシュに手渡した。
「なんだよこれ…まさかまた変なモン着けさせようとしてんじゃねえだろうな」
「“変なもの”かどうかは…見てから判断するといい」
ガサガサとアッシュが袋の中で何かをあけている。
なんだろう?
「…ッ!」
するとアッシュは大袈裟なほどに目を大きく見開いた。
「……おい、ジジイ」
「ハハハ…やはり覚えているか」
「これ…ッ…どういうことだよ…あの時、確かにお前はこれを捨てたって…!」
「それはお前からこの子へのプレゼントだったのだろう?」
ディノはニヤニヤと笑い、アッシュはひどく焦ったように迫った。
『…アッシュ?』
「……………ッ」
アッシュは私の問いかけにこちらを向いた。そしてじっと私を見つめる。
『な…なに?』
アッシュの表情は焦っているような、困っているような、照れているような…今までにあまり見たことのないもので戸惑ってしまう。するとアッシュは、ハアと大きく息を吐いて立ち上がり私の目の前にやってきた。
『……?』
「………これ」
そう言って差し出された小さな袋。私はどうしたらいいかわからず、そのままアッシュを見ていた。
「っ…ほら」
もう一度グッとそれを差し出されて、私はついにその袋を受け取った。