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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第24章 あの頃のキミへ


食事が並び、懐かしいような気持ちでナイフとフォークを握り口に運ぶ。


「ユウコ、お前もワインをどうだね?」

「…勘弁してくれ、酒は相変わらずなんだ」

「フッ、そうか…せっかくのパーティで眠られては勿体ない。そういえばユウコ、お前にも私からのプレゼントを用意していたはずだが、あれはどうしたんだね?」

『あっ……えっと、』


私がドアの横のマシューに目を向けると、彼は「はいはーい」と手を挙げて私の元へやってきた。

「パパ、それについてですが、実はユウコの希望があって。ね、ユウコ?」

「ほう?希望とはなんだね」


『うん…アッシュ、お願い』


私は隣のアッシュにあるものを手渡した。

「…え……これ」

「うん、ユウコはアッシュにピアスホールを開けて欲しいんだって」

私が手渡したのはピアスガンとピアスの入ったケース。アッシュはおもむろにピアスケースをパカッと開けた。


「…それは黒翡翠だよ。翡翠といえば浮かぶのはやはりミャンマーだが、日本のイトイガワという所でも上質な翡翠が採れると聞いてね、馴染みの宝石商に質の高い美しいものを選んできてもらったのだよ。それほどまでに純度の高い澄んだブラックは珍しいそうだ。ユウコの瞳の色は真っ黒でいて澄んだ輝きがあるからね」


「……へえ」


アッシュはそう言ってピアスを摘み、天井の照明に透かした。


「確かに、ユウコの瞳みたいに綺麗だな」



『……っ』

何気なく放たれたその言葉に胸がバクンッと跳ねる。

そしてアッシュは椅子をグッと私に近付けて、ピアスガンを握り私の右耳たぶに触れた。思わずピクッと肩が震える。


「……いいのか、俺で」

『っ…うん、アッシュがいい』

アッシュは穴の位置を定める為に首に息が掛かりそうなほどの距離まで近付いた。

そうか。ピアスの穴を開けてもらうってことは、耳に触れたりこんなに体を近づけることになるのか。

心臓の音がうるさい。
この音が聞こえてませんように。


「…いくぞ?」

『…ん………』



私は衝撃に備えて目をギュッと瞑る。

でもなかなかその衝撃が来なくて恐る恐る目を開けると、アッシュは口角を綺麗に上げて私を見ていた。




するとその直後、




バチンッ




と耳元で大きな音がした。
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