ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第23章 魔法使いとシンデレラ
「…ああユウコ、とても綺麗だよ。そのドレスも本当によく似合っている。先程も思ったが、素敵なレディに成長したね…あの頃よりも更に磨きがかかったじゃないか」
『ふふっ…ありがとう、パパ』
「どうりでアッシュが会わせてくれないわけだ。ありがとう…席に着いて食事をしながら色々と話をしようではないか。今日はお前の好物も用意しているよ」
私はディノの頬にキスをして、ロボさんたちのいる側から戻ろうとした…が、オーサーに呼び止められる。
「おい、愛しの旦那様には挨拶もなしか?」
『……』
「あんなに可愛がってやったばかりだってのによ」
まさか、オーサーはこの場で話したの?
アッシュにも、もう知られてる…?
『……っ』
「だんまりかよ?さっきは俺の“下”で素直に愛されてただろうが」
私は振り返りオーサーを睨みつけた。
するとニヤリと笑いクイッと指で呼ばれる。
これ以上余計なことを話して欲しくない、私はオーサーに近付いた。
すると、グイッと腰を抱かれ体を寄せられる。
「オーサー!」
アッシュの声が響く。
「あ?なんだよ、自分の嫁抱いて何が悪ぃんだ?」
『…っやめて』
私が抵抗すると、オーサーは私の耳元で吐息混じりに「綺麗だぜ」と囁いた。ふわりと漂うムスク、その香りに歯がギリッと音を立てる。
「おいお前…俺がつけた痕はどうした?」
『放して…』
「ふん…いくら隠そうが無駄だぜ、お前が俺の所有物だって証はお前のもっと奥底に刻んでやったんだからな」
そう言って私の腹部を撫でる。
『…っ!』
「いくらガキの頃バカみてえに交尾してようが、さすがのヤマネコ小僧も、別のオスの匂いを漂わせてるメスなんざ願い下げだろうぜ」
耳元でどんどん私から冷静さを奪っていくオーサー。
私は込み上げる涙を必死に堪えた。
『……離して』
私はオーサーの胸をグッと押しのけ、席へ急いだ。
あっ…!
その途中、焦りからかヒールがカーペットに引っかかりつまずいてしまった。
「っ…危ない」
そう言って咄嗟に私の体を支えてくれたのはユーシスさんだった。