ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第23章 魔法使いとシンデレラ
《アッシュside》
「パパ、…ユウコ・リンクスが」
その声に俺たちは一斉にドアに目を向けた。
オーサーに手酷いことをされて間もない。
…きっと憔悴しきっているに違いない。
ここにはヤツもいる。
マシューが傍にいるだろうから、早くに別室へ案内してもらうほかない。
重い音を立ててドアが開いた瞬間、
「……ッ!」
俺は言葉を失った。
「……綺麗だ」
ポツリとそう口にしたのは誰だろうか。
その通りだ。
いや…綺麗だなんてそんな安い言葉では言い表せないほどにユウコは美しかった。
ヒールを鳴らし、弱った様子をひとつも見せずに俺たちの前に現れたユウコ。
「…おお、これは素晴らしい!ユウコ、近くに来て見せておくれ」
『はい』
ユウコはチラッと俺を見た。
そして緩く口角を上げる。
「…っ」
俺は目が離せなくなった。
俺だけじゃない、この場の全員がこいつをただじっと見つめていた。先程まで散々吠えていたあのオーサーでさえも。
ディノの前にたどり着き、指示通りくるりと回るユウコ。
あれは日本特有の生地だ、本で見たことがある。
日本にいたらユウコはこれを着ていたのか、とその姿を想像したことがあった。
…恐ろしいほどに似合ってるよ。
目にすればするほど、心臓がドクンと脈打って落ち着かない。
俺はかわいた喉に水を一気に流し込んだ。