ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第23章 魔法使いとシンデレラ
コツンコツン、と私のヒールの音が廊下に響く。
マシューの魔法にかけられて、
私の中のマイナスな思いはどこかへ消えていた。
今だけでいい。
例え明日、泣いていてもいい。
せめて今だけ、
今だけは自信を持って彼の前に立ちたい。
…これが最後かもしれない。
最後くらい、強くてしゃんとした私を見せたい。
角を曲がると、大きな扉が見えてくる。
扉の前に立ち、ゆっくりと深く息を吸った。
「……ユウコ、」
名前を呼ばれ振り返る。
マシューの高いようで芯のある声は安心する。
「綺麗だよ」
『…ありがとう』
「大丈夫、自信を持って」
『うん…、あのねマシュー』
「うん?」
『私、“どんなことが起きても、アッシュに何をされても…彼のことを好きだって”…言えたよ』
「!…っ…そう、かぁ…」
『…魔法使いさんのおかげ。本当にありがとう』
「ふふ……
行ってらっしゃい、シンデレラ」
重い扉が開く。
私はヒールを鳴らしてその中へ歩き始めた。