ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第22章 不仕合せのlove bite
言われるままに部屋を移動して、私は今マシューが溜めてくれた浴槽でお湯に浸かっている。
強い瞳のマシューは私を世界で1番綺麗な女性にすると言った。
『………』
泣いて腫れぼったい目、押さえつけられて出来た両手首の痣、体中の鬱血痕、何度も重ねられた唇、無理矢理に暴かれ打ち付けられた私のナカ。
自分の目に映る全てが、穢らわしくて悲しくて苦しくて切ない。
身体や髪から今も漂うムスク。
オーサーの香水が移ったんだ。
繰り返された“俺のもの”という言葉通りになってしまったようで、恐ろしい気持ちになる。
『………っ』
綺麗になんてなれない。
なかったことになんて出来ない。
…なかったことになんて。
私は唇を噛んでお腹に手を当てた。
コンコン、とノックが聞こえる。
「ユウコ?そろそろ出れる?」
『…うん』
私はシャワー室を出て用意されていたタオルで体を拭き、バスローブを羽織った。