ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第22章 不仕合せのlove bite
《マシューside》
強ばる体に酷いことをされた後なのに俺は何をしているんだと急いで離れようとしたが、ユウコの指が俺の服をキュッと掴んだ。
『…きいてマシュー、もうだめみたい』
「………なにが?」
『私、幸せに、なれない…』
「そんな…まだこれから」
『…っ…もう、アッシュと一緒にいられない』
「どうして…?」
『くるしい…もう…全部くるしい、こんなに穢い私を見られたくない…これ以上きらわれたくない、嫌われる前に消えていなくなりたい…っ、好きでいるのが…つらい、でも…好きじゃなくなれない…だってずっと…ずっと大好きだったから…っ』
華奢な肩が震えている。
ーーああ、何故なのだろう。
何故2人の想いは重ならない?
こんなにもお互いが想い合っているのに…
どうして、交われないのだろう。
今思い返してみれば、アッシュはユウコを愛してるとは言ったけどその他のことは何も話してくれなかった。それはそういうことだった…つまり、2人の関係はあの時から何も動いていないんだ。
心と体が成長した分、より複雑に拗れてしまっているように思う。
なんとかしてあげたい。
2人が上手くいくように、幸せになれるように。
なにか出来ることはないかな…
いや、無力な俺に出来ることなんてひとつしかないじゃないか。
「………ユウコ、」
『……う、ん?』
「ユウコは綺麗だよ、昔から」
『え……?』
「アッシュがね、そう言ってた」
『………』
こう言うと昔なら顔を赤くしていたのに…
今はそんなに辛そうな顔をするんだ。
自信を持って、キミは本当に美しい。
アッシュだけじゃない、俺だってずっとそう思ってた。
でも、ユウコがそれを否定するのなら
「ユウコ、俺が綺麗にしてあげる」
『……?』
「俺がユウコを世界で1番綺麗な女性にしてあげる」
一生に一度だけの幸せな日を迎える前に、2人が行き違っては意味が無い。絶対に手離したくないとアッシュに思わせてやる。あの頃は塗らなかった赤いリップも塗ろうね。
幸せを諦めること、俺が絶対に許さない。
俺にできることはユウコに自信を授けること。
「俺の本気、見せてあげるよ」