ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第22章 不仕合せのlove bite
《マシューside》
「……あれ?」
何度ノックしても部屋から応答がない。
本当にここにいるのか?なにかの間違いじゃないの?
そう思いながらドアノブを下に捻る。
ほら、ロックかかってない、やっぱりここじゃないじゃん。
念の為、俺はドアを開けてその薄暗い部屋を覗いた。
「!?」
そこにいたのは、服を纏わずベッドに横たわる女の子だった。
「…………」
本当に驚いた時って、人間声なんて出ないもんだな。
黒髪だ。
間違いない、この女の子はユウコだ。
「そんなとこで……なに、してるの?」
『………』
「ねえ、キミ…ユウコなんだろ?」
『………だれ?』
顔を隠していた腕を少しずらし、ユウコは俺を見た。その目は泣き腫らしたように腫れていて、きっと良くないことが起きたあとなんだと分かった。
「…俺だよ、マシューだよ…もう、覚えてないかな」
すると、ユウコはゆっくりと目を見開いた。
『マ、シュー…なの?』
「…ああ」
『マシュー…ほんとうに?』
薄暗い部屋に目が慣れてきた時、俺はユウコの肌に無数の鬱血痕があることに気が付いた。これはきっと、アッシュがつけたものじゃない。まさかこの部屋で、ユウコは誰かに無理やり…
「……ッ、」
『…わあ…久しぶりだね、顔見たい、な』
そう言ってユウコはゆるりと体を起こし、震える足で立ち上がった。無理しないで、そう手を伸ばすと、ふいにユウコは自分の足に目をやった。釣られて目をやると、
「……っ!!」
ユウコの内ももには、おそらく…精液が流れ出ていた。
『…あ…れ、ごめん…見苦しいね』
せっかく久しぶりに会えたのに、なんてあまりに酷く悲しい声で笑うものだから俺は堪らなくなってユウコを抱きしめた。
あの頃より大きくなったな、ユウコも。
でも、あの頃より繊細で…まるでガラス細工のようだ。
触れ方を間違えば壊れてしまいそうな程。