ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第22章 不仕合せのlove bite
《マックスside》
なんだなんだ?
なんなんだこの状況は?
なぜ俺はこんなにめかしこんで息をするのにも緊張している?
給仕たちがそれぞれのテーブルにカチャカチャと食器やらグラスを並べていく。こんなに広いテーブルをたったこんだけの人数で囲むなんて贅沢すぎるぜ…。そもそもなんだよこのメンバー。オーサーにユーシス、ゴルツィネ…!?
ちらりと横を見るとカチコチと音がしそうなほどに緊張しているシュンイチと目が合う。俺は小声で話しかけた。
「…肩が凝ってしかたねえ、タキシードなんて大学の卒業パーティー以来だぜ」
「俺は生まれてはじめてだよ…」
「にしちゃ、似合うぜ?」
「よしてくれ、腹話術の人形になった気分だ…」
「…お退屈ですかな?おふたかた」
「ッ!…あ、いや…」
突然ゴルツィネが話しかけてくるもんだから、ぶわっと全身から汗が流れ出した。
「食事の後にはちょっとした趣向を用意してあるのでね…気に入っていただけると思いますよ」
ふう、と息をついてふと視線を正面に向ける。
…ん?
「アレってもしかして……」
「ああ、気が付かれましたか。そうです、あれはあなた方もよく知る2人の幼い頃ですよ」
「………」
高級な絵画と見間違う程にこの空間に馴染んでいたから今の今まで全く気が付かなかったが、あれはたしかにアッシュとユウコの写真だ。
写真の中の2人は周りにエフェクトが見えるほどに美しい笑顔をしている。…ったく、ちっちぇー頃から恐ろしいくらいの完成度だな。アッシュのやつ、あんな笑顔も出来んのかよ!
ってあれ…?なんか光ってると思ったらユウコ、涙流してるのか?それに、なんだ…あのアッシュの手に握られてるやつ…おい、ユウコが着けてるのってもしかして、
「………首輪?」
その時
ガチャ…と品のいい金具が擦れる音がして重々しい扉が開いた。
「「ーーー」」
俺とシュンイチは現れたその男に、
いや…その男の姿に声のない悲鳴を上げた。
この場にいる全員がその姿を見つめている。
間違いない。
お前、今視聴率100%だ。
「ーーー美しい」