ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第22章 不仕合せのlove bite
《英二side》
「…………っ」
「どうしたのさ、何か言いたそうだね」
「キミは…キミは平気なのか!?こんなことが…!」
「何が?彼と寝ることが?それとも彼が僕とキミを両側に寝かせて楽しもうとしたこと?」
「両方だよ!」
腕の拘束を解いて貰い、手首をさする。
「…別に大したことじゃないだろう?キミのご親友、アッシュ・リンクスだってやったことだ。彼は元々ゴルツィネの抱える高級男娼のひとりだったと聞いている。それが昇格して専用のペットとなって、さらに昇格して末端のシマを任され地域の不良少年たちのボスとして君臨するまでになった。使い捨ての少年男娼から自分の腕と才智で、文字通り彼は這い上がったんだよ」
アッシュが、やってきたこと…。
話には聞いてきたけど、実際に目にするとグロテスクだ。今のより酷いことをアッシュはずっと耐えてきたんだ…。
「綺麗ごとなど言っちゃいられないさ。生き延びることが最優先だっただろうからね…アッシュが“処分”されずに生き延びてこられたのはほかの少年たちにはない何かがあったからだ。ディノ・ゴルツィネは見る目のある人物だからね…彼はそれを見抜いたからこそアッシュを殺さず自分の片腕として育てようとしたのさ」
「…………」
「…それはあの子も同じ」
「あの子…?」
「…ユウコ・リンクスのことさ」
「ユウコ?」
「キミは眠っていたから見ていないだろうけど、彼女はゴルツィネのペットとして完璧に仕事をしていたよ…僕の兄を相手にさ。彼女もアッシュと同じように幼い頃から体と頭を使って生きてきたようだ」
ゴルツィネのペット…。たしかに僕が目を覚ました時、ユウコは頭を撫でられていたっけ。あれはすごく違和感のある光景だった…。
「あんたはよっぽど幸福に暮らしてきたらしいね、あんたを見てイライラするのはどうもそのせいらしい。だが、もう目をそらすわけにはいかないだろう、根性をすえてよく見ることだ。
“山猫の番”の属する世界を…」
「……………」