ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第22章 不仕合せのlove bite
「……っく、出すぞ」
そんな言葉が聞こえて、私は下半身に目を向ける。
そういえば、
『…っ…スキ、ン…は?』
「あ?…ンなもんつけるわけねえだろ」
『!…っや、どうして…!?』
「お前を孕ませんのが目的だからさ…ッ!」
孕ませ……うそ、
『……や、やめて…やだ、やだ!』
「…これで…ようやく俺のもんだな…っ」
『やだ…!お願い…中は、だめ…!』
「…っふはは、……ッ、出すぜ」
『やっ……やだ、やめて!!』
「…おら、孕め!!」
『……ッ!』
ドクンドクンと私の奥で脈を打つのがわかる。
頭が真っ白になる。
私がオーサーの子を妊娠すれば、それこそアッシュとはもう一生一緒にいられない。
ーーあの時のクリスのように。
オーサーは最初からそれが目的だったんだ
今は避妊薬など持っていない。
あの時に飲ませられていた薬は定期的に往診にきていた医者が処方したもので、もうこの屋敷にあるはずもない。だってそもそもこの屋敷に避妊薬が必要な女など私以外にいたことがないのだから。
体中の力が抜ける。
『……………』
グイッと腕を引っ張られ無理やりに体を起こさせられると、ベッドの真横にあるドレッサーを顎で指した。
誘導されるまま鏡に目を向けると、吐き気すら催すようなグロテスクな光景が映っていた。
「おい、見てみろよ…俺たちまだ繋がってるんだぜ?」
『……………』
首、胸、脇腹…どこを見ても鬱血痕だらけ。
「…お前もいい加減分かったろ。アイツはお前のピンチに現れるヒーローじゃない、なんてことのないただの男なのさ」
『…………』
「おい、何とか言えよ」
『…かった』
「あ?」
『それでもよかった…私は、そのなんてことのないただの男が好きだった…ずっと』
「…ッはは、それはそれは…報われず残念だったな」
そう言ってオーサーは私の髪を手に取り口付けた。そしてそのまま抱き寄せられ唇が重なる。
いやに優しいねっとりとしたキスにまた涙がこぼれる。
「……んな顔すんな」
オーサーは私の涙をぺろりと舐めて、身支度を整えて部屋を出ていった。