ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第8章 止まらない涙
《英二side》
Everything…、全て。
なんだよ、ユウコ…
何が永遠に交わらないだよ…
キミたちの想いはもうとっくにひとつじゃないか。
好きになってもらう資格がないだなんてユウコは言っていたけど、人と人が愛し合うのにそんなものはいらないんだよ。
「…アッシュ、キミのお願いはきけない。」
「!?…どうして!」
「僕はキミの代わりなんか、ごめんだよ。彼女のことがそんなに大事なら、自分で守れ。」
「…………っ…」
アッシュは僕から目を逸らしフイッと窓に顔を向けた。
その彼の頬には、一筋の涙が流れていた。
メモ帳の一番上のページをビリッと破り椅子から立ち上がる。
僕は病室から出た。
「!?」
「どうした?どうしたんだ英ちゃん!!」
そこで気づいた。
僕も泣いていた。
涙が溢れて止まらない。
「い、伊部さ……ぼく、と…とても…言え、な…」
「どうしたんだ?エイジ、日本語じゃわからない!イベ、彼はなんて言っているんだ?アッシュは?」
「ちょっと…ちょっと待ってくれチャーリー。すまん、ちょっと落ち着くまで待っててくれないか…落ち着いたらちゃんと説明するから…」
「……」
僕は伊部さんに支えられて談話スペースのソファに座った。
「…アッシュはもう覚悟を決めてるんです…自分の中で整理をつけちまって…僕は…とても言えなかった。ほかのヤツに任せろなんて…。敵わないってことは…彼がいちばんよく知ってるんだ…」
「わかったよ…わかったからもう泣くな…な?…俺たちが見届けてやろうな、これも何かの縁だ…あいつがどこまでやれるのか、しっかり最後まで見ててやろう…そうしたいんだろう?」
すると、先程まで僕達がいたあたりから大声とバタバタと走り回る音が聞こえてきた。
「どうしたんだ?」
伊部さんとそちらに向かうと
「イベ!今日ロボに会うと言ったな!」
「あ?ああ…」
「俺も一緒にいく!」
「え?」
「説明はあとだ!!」
チャーリーが伊部さんに詰め寄ってそう言った。
僕達は車で州立フォークナー刑務所に向かった。