ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第8章 止まらない涙
《英二side》
「えっ?」
「お前、あの倉庫であいつと色々話してたろ?本当はスキップが目を覚ますより前に起きて、少し聞いてた。…日本語は全くわからねぇから何話してるのかは分からなかったけど。…あいつ楽しそうだった。」
「…そう…」
「なんか書くもんあるか?」
僕はポケットに入ってたボールペンとローテーブルにあるメモ帳をアッシュに手渡した。
「はい」
「サンキュ、……えーっと…ここがこうで…」
カチッとボールペンの芯を出すと、ブツブツ言いながら何かを書き始めた。
「……ほら」
そう言うと何かを書いたメモをこちらに渡す。
「……佐藤、…優子?」
そこには、漢字で佐藤優子と書いてあった。書き慣れているのか上手な文字だった。
「あぁ、…あいつの名前。」
「……っ」
キミは今自分がどんな表情をしているかわかってる?
頬をほんのり紅く染めて、
そんなに嬉しそうに口元を緩めて…
でも目だけは寂しそうに揺れて。
どうして僕に彼女の名前を……
その時、ユウコとの会話が頭に浮かんだ。
“私たちのLOVEは永遠に交わらない”
「ねえ、ひとつ聞かせて。」
「…なんだよ?」
「アッシュはユウコのどんなところに惚れたの?」
僕はユウコにしたものと同じ質問をアッシュにした。
「……Everything.」