ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第22章 不仕合せのlove bite
私は庭に出ていた。
もうじきにアッシュがここへ到着するという話を聞いたから。
夕焼けで赤くなった空を見上げて、深呼吸をする。
…相変わらずこの庭は広いなぁ。
遠くからスーツの男が飽きずに私を監視していて、こんな感覚も変に懐かしさを覚える。幼い私たちの傍にずっといたジョセフという男は今もまだディノの下にいるのだろうか。冷たい鉄仮面のような顔に眼鏡をかけ、クールな大人というイメージだったがそれでいて時折優しい目で私たちを見ていた不思議な人だった。
不思議といえばずっと忘れずに覚えている記憶の中に、彼が私の首輪の鍵を手に入れてくれたという出来事がある。その時の私のことは、自分自身今も当時の記憶が曖昧で時系列がぐちゃぐちゃになってしまっているのだけど、そのことだけは鮮明に覚えていた。
もしこれがパパにバレたらジョセフは殺されちゃうかもしれないよ、そう必死に言う私に彼は、それならそれでいい、この為の罰ならば喜んで受ける、と。
あれはどのタイミングだったかな、リュビームイに出会った時はまだ首輪をしていたはず…となると、アッシュが少年刑務所を出る前?いや、その時にはもう……だめだ、わからない。
『……はあ』
首輪のことを思い出すと、今もまだ少し首が絞まるような感覚がして苦しくなる。