ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第21章 New York
《アッシュside》
あれから俺たちは腕を拘束されたまま、空港までたどり着き飛行機に乗せられた。
ガタッと扉が開いたと思えば、さっきの男だった。
「あともう30分もすれば摩天楼が見えてくる。懐かしいお前のジャングルだろう?山猫小僧」
「………」
「そういえば、山猫の姫は飼い主の元でイイコにしているそうだ」
「!」
もうタコには会わせる気はなかったのに、どうして俺たちはこういう運命を辿ることになってしまうのか…。
「さすがはジャパニーズ、最高の“おもてなし”をしてくれたそうだぜ?」
「…あいつはアメリカ人だよ」
「ふん、…ああそうかよ」
そう言ってその男は出ていった。
「…なんだよ、オッサン」
「ああいや、お前はさぞ心配だろうと思ってな…」
「まあな…だがあいつもだてに生きてきてねえ。咄嗟にモールスでメッセージを送ってくるくらいには頭がキレる…なんとか、やってくれてるさ」
「そうか…そうだな…いやお前らはすげえよ」
「何がだよ?」
「こういうピンチの時に無条件にお互いを信じられるっていうのは、すごいことだよ。ユウコだって、あんな状況で分かりにくいサインをしてきただろ?…お前が理解してくれるって信じたから出来たことだ」
「もう長いこと、一緒にいるからな」
「…あとはもう少しずつお互い踏み込めればな」
「あ?なに、聞こえないよ」
「いや、なんでもないさ」
「…そーかよ」
俺は窓の外を見た。
30分で摩天楼…となると今はあの辺だな。
なんとなく空路を思い浮かべる。
何か考えていないと不安でおかしくなりそうだった。信じてるといえど、あいつに何かありゃあしないかと心配なんだ。
あそこは不安の種しかない。
何の目的で俺たちがあそこへ集められるのか、まだいまいち掴めねえが必ず今回も切り抜けてみせる。
ずっと不安そうな顔をしているイベのためにも、エイジ…お前も無事でいてくれよ。