ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第8章 止まらない涙
《英二side》
「それを恨んでヤツを殺したんだろうって…古い写真やフィルムまで持ち出して、アッシュを責めたてたんだ…俺は情けないよ…あんなヤツが同じ警察官だなんて…」
「…そうだったのか…」
「頼む英二!アッシュに話してみてくれないか?切り札をこちらへ引き渡すように。俺はもうこれ以上我慢できない。子供が殺されるのを見るのはたくさんだ!ヤツの死体を検死官事務所で見るはめになんぞなりたくないんだ」
「僕に……もし僕にできるのなら…」
命をかけて助けてもらったんだ。…ユウコと話した時、過去に何かがあったんだろうと思っていたけど、まさか2人がそんな辛い経験をしていたなんて…。
僕はアッシュの病室のドアをノックし、中に入る
「やあ、アッシュ」
努めて明るく、自然に…。
「ああ」
「どう?具合…」
「そっちこそどうなんだ…塀の向こうにマットはなかっただろ?」
「…あぁ、でもこれは大したことないんだよ」
傷だらけのキミをみたら、僕の傷なんて本当にこれっぽっちも大したことない
「見事なジャンプだったよな…お前にあんな特技があるなんて思わなかったぜ」
「…でもーースキップにお礼も言えなかった…」
「………」
「あ〜…アッシュ…あのーーいや、その…」
僕は話のきっかけを作ろうとするのに、なかなか話始められない。
そんな僕を見て、アッシュはフッと笑った
「チャーリーに言われて来たんだろ?」
「え!?あっ…いや、そ、そんなわけじゃ…」
「おまえもウソのつけないヤツだな」
あー、全部バレてる。
参ったな。
「…ヤツからきいたろ?昔の俺たちのこと」
そう言われた瞬間、心臓がドクッと大きく動いたのを感じた。
「えっ…な、何…」
「日本にはないのかよ、ああいうエゲツない本とかって。」
「あっ、あの…あんまりよく知らないんだ」
アッシュは窓の外を眺めながら、
「おまえはいいな…あんなふうに跳べて…」
そういうアッシュの目には太陽の光が入り込んで、鮮やかなグリーンがとても綺麗だった。
…綺麗なのに、その目には諦めの色が濃く映っていて、見ているのが辛くなる。
「…俺に万が一のことがあったら、ユウコを頼むよ」