ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
《アッシュside》
「…おい!なんで俺だけ後ろなんだよ!これじゃションベンもできねーよ!」
おもむろに近づいて来たかと思うと、俺の服をバッと捲りあげた。
「わ…っ!」
そして股間に隠した銃を握られる
「いい持ち物だな、小僧…S&W357マグナムか、ったく子どものくせに……貴様が1番要注意人物だな!」
「…っう!」
思い切り殴り飛ばされ、地面に倒れる。
くそっ…!痛てぇなバカヤロー!
「いいか、小僧…俺たちはコルシカ人のように甘くはない。お前の“見てくれ”には誤魔化されんぞ、よく覚えておけ!」
「よせ!相手は無抵抗なんだぞ!殺す気か!」
「ぜひそうしてやりたいところだが…そのお楽しみはムシュウ・ゴルツィネが予約済みだ。……ところでマックスゥ?あんたの女房は、イイ女だなァ?」
「…きさまがジェシカを!!……ぐあっ!」
「マックス!!」
「女房の仇は、必ずとってやるぞ…っ!」
「車を裏口へ回せ、すぐ空港へ向かう。最後の仕上げにかかれ!」
「おい、オッサン…大丈夫か?」
「……なんとかな、お前こそ大丈夫か?」
「こんなん屁でもねえよ」
「…ったく、お前だけはつくづく敵に回したくねーな」
ビチャビチャと音がしたかと思えば、ツンと鼻をつく匂いがする。
「この臭い……ガソリンだ!」
「なに!?火をつける気か!?」
「や、やめろ!やめてくれ!私の研究が…!」
「うるせえな、どけジジイ!」
タバコの火を落とすと、火が一気に燃え広がった。
「あぁあ…やめろ、やめてくれえっ!」
「悪く思うなよ…全ての記録を抹消しろという命令なんでな」
「…あぁああ…」
「行くぞ!もたもたするな!一緒に焼け死にてえのか!」
屋敷の外に出て振り返ると、先程までいた辺りはバチバチと音を立てて崩れはじめていた。
「……くっ」
先に遠く連れ去られたユウコを思い浮かべる。
今どうしてる…?
どうか無事でいてくれ…
すぐに助けにいく。
激しく燃え上がる屋敷を見て、これをユウコが見ることにならなくてよかったと心から思った。…きっとこれを見れば、おじさんとおばさんの最期を想像出来てしまうだろうから。