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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第20章 Los Angeles


《アッシュside》

「“悪夢”だ」

「悪夢だって?」

「LSDなどある種の薬物は幻覚作用を引き起こす。使った人間の精神状態がよくなければバッド・トリップに陥る。…BANANA FISHは全ての人間にこのバッド・トリップをもたらすのだ。どんな人間だろうと、この悪夢から逃れることはできん…恐怖や憎悪、あらゆるナーバスな感情を拡大させてしまうのだ」

「…でも客が1発でイカれちまうドラッグなんて、商売にならねえだろ」

「第一、軍がそんなもんに興味を示すとは思えん」

「ああ…これだけならただの粗悪な幻覚剤にすぎない。問題なのはこれが外部からの刺激を受けやすいという点だ。…薬物暗示というのを知ってるか?」

「ああ知ってる、旧ソ連が開発した薬物による催眠暗示でスパイ行為や要人暗殺を強要する戦略だろ?いやでもあれは…確実性が低くて全く実用化されなかったって話だぜ」

「BANANA FISHは、それを100%可能にするのだ」

「!?」

「例えば、あれを飲ませたうえで「Aという男がお前を殺そうとしている!殺られる前にAを殺せ!」と言えばその通りのことが起こる…」

「な、なんだって?」

「そんな、馬鹿な…」


「最初にそのことに気づいたのは弟だ。もう1人の仲間が出来上がったばかりの薬を試して死んだ…私は恐ろしくなって薬を処分したが、弟は隠し持っていたんだ。そしてイラクの地で捕虜や兵士たちに…」

「モルモットにしたのか…?仲間を、グリフを!」


「……ッ!」

俺は一気に頭に血が上って、ジジイの胸ぐらを掴み上げた。

「…お前らがそんなもんを作ったせいで…兄貴もスキップも、みんな…!兄貴は…兄さんはそのために…悪夢に魘され続けて…ッ!」

視界がみるみる歪み、頬を熱い液体が流れる。
悔しくて悔しくて、言葉にならない。
怒りに狂っておかしくなりそうだ。

「……だけどこれでタコぼうずのハラがわかった。ヤツはあんたの弟と組んで、

合衆国と取引するつもりだ…!」


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