ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
《月龍side》
「…っぐあ、」
「何故データを手に入れなかった!」
「…っ、あなたも…アッシュを知っているのなら…彼がただの少年でないことは、わかっているはずでしょう…?アッシュはそんな隙を見せたりしない…」
「だからお前を送り込んだのだ!そのお前でも、ヤツには敵わなかったというのか?」
「………っ…ぅあ、」
「嘘ではないだろうな!?」
「…どうして、嘘なんか…」
「よく覚えておくことだ!…私に逆らおうなどという気を少しでも起こそうものなら、私はいつでもお前の細首など片手でへし折れるのだということをな!」
「……ゲホッ…う、…」
「華龍、お前が私の名代として彼らをディノ・ゴルツィネに引き渡してきてくれ。敵がどういう人物か、その目でよく見てくるのだ」
「わかりました、兄さん」
「………」
「お前もいくのだユーシス。アッシュ・リンクスの件のかたがつくまで…“人質”としてな」
「!」
「あの男が何を考えているのか今ひとつ掴めん…しかし我々にとってもコルシカ人どもが握っているヨーロッパ市場は魅力的だ。波風はあまり立てたくない…弟のお前を人質に差し出せば一応面目はたつ」
「……っ」
「おまえが“月龍”の名をもつことはヤツも知らん。懐に飛び込んで探り出すのだユーシス…ヤツの本当の企みをな。安心しろ、見殺しにはせん、お前にはまだまだ働いてもらわねばならんからな」
「…………」
「返事はどうした!!」
「っ……わかりました、兄さん…」
「王龍様、ゴルツィネ様からのお使者がまいりました」
「わかった。支度をしてこい、ユーシス。スウルーを待たせてある」
コツコツと革靴を鳴らし、兄さんたちは出ていった。
ヤツは何も知らない、か…
知らないのはあなたもだよ、王龍兄さん
“BANANA FISH”はただの暗殺用のちゃちな薬物じゃない。
…もし僕の推測があたっていたらーー