ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
《月龍side》
「…さて、話を聞こうか、ユーシス」
「………」
「お前は華龍に情報を渡すことを拒んだそうだな?」
「渡したくても渡せないからです…兄さん」
「…なに?」
「プリントアウトされたものは全てアッシュ・リンクスが握っていた…けれど必要なことは、全て頭に入れてきました」
「ほう…では聞こう、“BANANA FISH”とはなんだ?」
「あれは、我々にはなんの意味もないもの。アルカロイド系の有機化合物で神経中枢に直接作用します。自律神経系を麻痺させ心不全に似た症状を起こさせる…。数分、あるいは数十分で死に至ります。見た目は心臓麻痺にしか見えない…何より優れているのは痕跡が残らないこと…。通りいっぺんの解剖ではまず発見されることはありません。暗殺用としては極めて優れています」
「……本当か?」
「僕をこの分野の専門家に仕込んだのは兄さんのはずでしょう?」
ガタ、と椅子が揺れる音がして直後、伸びてくる太い腕に僕は首を掴まれた。