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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第20章 Los Angeles


『……ッ』

伝わった、だろうか。
そもそも私のスマホはきちんとアッシュの元へ電話を掛けられたのだろうか。


「どうかした?そんなに不安そうな顔をして」

『……べつに』

「あっそう。そういえば“BANANA FISH”だっけ…あれは変な薬だね。確かにひと騒動起こるのも頷ける」

「…わ、わかるのか…おまえ!」

「ある程度ならね。6つの頃から数万種の薬草や薬物…毒薬、劇薬の知識を叩き込まれたんだからね。…おもしろいな、あれはほんとに…兄はそのことに気づいて僕をよこしたのかな…それとも、」

「ユーシスさま」

突然言葉を遮るように運転席の男が声を発した。

「…わかってる、余計なことを喋るなと言うんだろう?わかっているさ…ずっと以前から」

そう言うとユーシスさんは窓の外に目を向けた。

私とショーターは目を合わせ、この不思議なやり取りに首を傾げた。




それから暫く無言のまま車に揺られ空港に着いた。
車を降りると、黒いスーツにサングラスをかけた男たちに囲まれる。

「…こちらへ」

誘導されるままにただ長い廊下をひたすらに歩く。

「…どこまで歩かせる気だ」

「ふっ…車椅子を使えばよかったのに。そんなに彼を傍から離したくないのかい?」

「うるせえな」

「VIPルームだよ…兄がそこで待っている」


足が震える。
これからのことを考えると吐き気がする。

なるようにしかならない、そう何度決心しても心は恐怖に揺れる。
エイジが眠らされている以上、下手なことは出来ない。
逃げることも、抵抗することも…。



「ここだ」

『……っ』

「月龍さま、ご苦労さまでございました。中で華龍さまがお待ちでございます」


重々しいドアが開くと、中には夜景を一望できる大きな窓の前でワイングラスを揺らす男がいた。



この男は、

……李 華龍。


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