ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
私がリビングに戻ると、もうみんなはそこに集まっていた。
なんだか空気が重いな…。
「………」
エイジはキュッと口を結んでいて、いつもの明るい表情はどこにも無い。
「…酔いはさめたのかよ?」
『っ…あ、うん…もう全然平気…』
さっきのロボさんとの会話を思い出して、私は若干声が裏返ってしまった。顔があつい…実際にアッシュに言われたわけじゃないのに…。
「ほんとかよ?…まだ顔赤いじゃねえか」
『や…もう大丈夫、これは違うの』
「ショーターと会わなかったか?あいつお前を探しに行ったけど」
『あー、会ったけど…』
…ショーター、何があったんだろう。
あんなショーター初めて見たかもしれない。
「…会ったけど、なんだよ?」
『いや、えっと…』
「やー、悪ぃ悪ぃ…トイレ行ってたんだ」
後ろからショーターの声がする。
私の肩をポンと叩き、椅子に座った。
「…お前も座れば?」
『あ、うん…ありがとう』
アッシュが自分の隣の椅子をひいてくれたので、そこに座る。
「召し上がってください」
スウルーさんはそれぞれの前に食事を用意してくれた。
手を付け始めた時、
ブーッブーッとスマホの着信を知らせる音がした。
誰のが鳴ったのだろうとキョロキョロしていると、ロボさんが画面を見て青ざめるのが見えた。
「出ないのか?」
「げっ……ジェシカだ…」
「慰謝料よこせっていうんじゃねーの?」
「うっせーな!クソガキ!…あー、はいもしもし?ジェシカ?
…ん?きさま誰だ!!」
『「「「「!?」」」」』
突然声を荒らげたロボさん。
「…何!?………ジェシカ!!…マイケル!そこにいるのか!!ま、待て!!これ以上女房と息子に何かしてみろ!脳天に鉛玉ぶち込んでやる!!」
騒ぎをききつけたユーシスさんも部屋からリビングへ降りてきていた。
全員が立ち上がり、ロボさんを見つめる。
「…この家に武器はあるか?」
いち早く声を発したのはアッシュだった。
「ち、父の猟銃ぐらいしか…」
「出してくれ、弾丸も忘れるなよ」
ロボさんの電話からはわずかに声が漏れて聞こえていた。
「アッシュ……」
「聞こえたよ、俺を連れて来いって?……どうやら簡単にはニューヨークへ帰らせてはくれないみたいだな…」