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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第20章 Los Angeles


その時、強い風が吹いた。

『わっ…!びっくりした…!』


「……ユリ、」

突然私の名前を呼んだユーシスさんが私に手を伸ばした。

『っ、』

それに反応して私が少し身構えると、ふっと口角を上げて私の乱れた前髪を直してくれた。

「…さっきの風で髪が」

『あっ…ありがとうございます』

「綺麗、ですね」

『え?…いや、ユーシスさんのほうがつやつやのサラサラで!とても綺麗ですよ』

「…髪だけじゃなくて、あなた自身が」

切れ長のセクシーな目でまっすぐ見つめられ、私は思わずドキッとしてしまう。

『え……あ、からかって…ます?』

「まさか!…本心ですよ」

『っ……もう、やめてください』

「…あなたくらいの人ならこう言われるのなんて珍しくもないでしょうに……っふふ、かわいい人ですね」



「おい、ユウコ」


その声を聞いたユーシスさんは眉をピクリと動かして、「では」と一言告げると部屋の中に入っていった。


『ショーター、どうしたの?』

「…何もなかったか?」

『なにが?』

「いや…ないならいい、お前の姿が見えなくて心配になっただけだ」

『な、なにそれ…もう、私のパパは過保護だね〜』


「…………ッ」


すると、ショーターは突然私を抱きしめた。

『っ…!?パ、パパ…ちょっと、過保護がすぎますよー?』

「…………」

『ショ、ショーター?…ねえ、ショーター』

パシパシと脇腹のあたりを叩いて呼びかけても何も返答がない。


『…どうしたの?……ねえ、苦しいよ』


「…っ…俺も、苦しい…」

『…ショーター?』



「…助けて、くれ」




『…え?』


小刻みに震えるショーターの体。
冗談かと思っていたのに、どうやら違うらしいことがわかった。

もしかして、泣いてる…?



『…ねえ…ショ、』

「っ…なーんてな!」



私が顔を覗こうとした時、ショーターは勢いよくバッと離れ両手をパーにしておどけたようにそう言った。


『……ショーター?』

「あんだよ、その顔!ただの冗談だろ!…ていうかお前体冷えてる、もう中入れよ」

『…うん』

「そろそろ飯だってさ」

『そっか。……ねえ、ショーター』

「なに?」


『私先に戻ってるから、
…鼻声が治ってから戻っておいで?』


「っ、

…………あぁ、そうするよ」


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