ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
あのあとキッチンを出た私はバルコニーで夜風にあたっていた。あんな話をロボさんにしてしまうなんて…少し酔っていたとはいえ、
『…恥ずかしいな』
私は背後に気配を感じて振り返る。
『!……あっ』
「どうも。体が冷えませんか?」
そこにいたのはユーシスさんだった。
『いえ、少し風に当たりたくて…』
「そうですか、僕も同じです。…それにしても驚いた、あなたも人の気配に敏感なのですか?」
『あなたも?…ああ、アッシュのことですか?』
「ええ、彼にはひどく殺気のこもった目を向けられてしまいました」
『…あ、はは』
「……少しご一緒しても?」
『はい、もちろん』
私がそう言うと、ユーシスさんは私の隣に並び風になびく髪を耳にかけた。
「あなたのこと、聞いてもいいですか?」
『え?』
「生まれとか、どうして彼らと共に行動してるのか…とか」
『ああ…、私の生まれは日本なんです』
「エイジ…と同じ?」
『はい』
「何故アメリカへ?」
『実は…まだ日本にいた3歳の時、両親を交通事故で亡くして孤児院にいたんです』
「……そう、でしたか」
『それで、それから1年後にアメリカのとある夫婦から私を養子にという申し出があって4歳の時にアメリカに来ました。もう、私を引き取ってくれた両親もいないのですが…それからずっとこっちで暮らしています』
「……」
『…だから、初めて会った時にユーシスさんがドースン博士の養子だって聞いたとき、なんだか似てるな…同じだなと思ったんです。勝手に親近感を…すみません』
「……いえ」
『あの…ユーシスさんの本当のご両親は今どうされてるんですか?』
「…ああ、…僕の本当の両親も…もういません。母は僕が6つの時に…父はそれよりも前でした」
『そうだったんですね…なんだか本当に似てますね、私たち』
「…ええ、本当ですね。彼らとはいつから一緒に?」
『私とアッシュは幼なじみで、もうずっと一緒に。エイジたちは、長く一緒にいるような気がしてましたけど、考えてみたらまだ全然最近なんです』
「…幼なじみ、ね」