ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第20章 Los Angeles
アッシュの足音が遠ざかって行く。
顔をあげたいのにずっと心臓の音がバクバクうるさくて、苦しかった。この鼓動の速さはお酒のせいだけじゃない。
…だって私、今なにを言おうとしてた?
『〜〜!!』
「なんだなんだ!どうしたよユウコ」
『ロボさん…ううう』
「…どれ、この人生経験豊富な“オッサン”が話を聞いてやろう。なんでも遠慮せずに話してみろォ!」
『あのね、アッシュとエイジは私の中では全然違くて…』
「おいそりゃ俺の中でもちげえぜ!…まあお前の言いたい意味は伝わるよ。友達としてか、
ーー1人のオトコとしてかってことだろ?」
『っ…………うん』
「…へえ、お前もアッシュが好きなのか」
『…“も”?え、まってよロボさん…ロボさんも?』
「違う違う!今の“も”は忘れてくれ!いいか?なんでもないんだ。とにかく!お前はアッシュのことを恋愛として好きなんだな?」
どストレートにそう言われ、私は恥ずかしくて再び机に突っ伏す。
「…ふぅん、へえ〜…そうだったのか…お前ら青いなー!」
『…恥ずかしい』
「それで?」
『さっき、ロボさんにアッシュがいるだろって言われたとき…、もちろんそうだし、これからも一緒にいてほしいなって思ったんだけど、私アッシュとは兄弟になりたいわけじゃなくて…だから、その、ね?家族っていうなら…もっと違う…なんていうか、その……』
「結婚して夫婦になりたい、と?」
『!』
結婚………
アッシュと私が……夫婦?
昔エイジの言ってた“本物の番”に?
「おーい…ユウコ?」
『…あ、え…っと……』
「なんだ、違うのか?」
『うーん…わかんない……夫婦ってさ、アッシュにも好きになってもらわないとなれないやつでしょ?』
「そんなん当たり前だろ!…まずは両想いになって、お付き合いして、愛を誓い合って、それが結婚!夫婦ってやつだ」
『…ああ、じゃあだめだ』
「だめって?」
『アッシュは私のこと好きにならないもん』
「…は?なんて?」
『だからアッシュは、絶対に私のことなんか好きにならないって…そういうこと。わかってるんだよずっと昔から』