ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第7章 何度も抉られる
《アッシュside》
ぶん殴ってやる!
そう目の前のエヴァンスタインを睨みつけるが、その目はニヤリと笑って「やれるもんならやってみろ」とでも言うかのようだった。
フイッと顔を逸らして、俺は再び座る。
「…おまえの仲間が知ったら驚くだろうなァ。自分たちのボスがキディ・ポルノのアイドルだったとはな。」
「もうよせウイラード!!いい加減にしろ!!子ども相手に古傷をかきむしるような真似は!」
「まるでオレがいじめてるみたいな言い方だな…」
「そうじゃない!ただこれ以上昔のことを持ち出して…」
「エヴァンスタイン警部補、あちらの準備ができたそうです。」
「いいだろう、連れて行け。
またな、ムービースター」
廊下に出たところで
「…よく我慢したな…アッシュ」
ジェンキンズが肩に手を置いた。
反射的にそれを振り払う。
「…俺に、さわるな…!その汚らしい手で、俺にさわるな!!!」
そう睨み、その場を後にする。
誰も俺たちの傷を、過去にしちゃくれない。
傷はいつまでも抉られ続ける。
何度も何度も、かさぶたになる間もないくらい
抉られ続ける。
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「ウイラードのヤツめ…むごいことをしおって」
「ええ…ありゃあひどすぎます、ぶん殴りたいのを我慢するのがホネでしたよ」
「アッシュはもう二度と心を開いてはくれんだろうよ…お手上げだ」
「私が話してみます。なんとか…」
「ムダだな、あの目を見ただろう…あんな全身で拒否されたのは初めてだ…まさに山猫に逆毛を立てられたような気分だぜ」
「でも…とにかく、やってみます」